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:: 2013/7/20 土曜日::

■[ラノベ]善良な嘘つきの恋「とある飛空士への誓約」3巻

とある飛空士への誓約 3 (ガガガ文庫)
著者/訳者:犬村 小六
出版社:小学館( 2013-07-18 )
文庫 ( 344 ページ )
作者twitter:犬村小六 (inumura569)さんはTwitterを使っています
絵師サイト:ALL GREEN

かぐらとバルタザールの卒業で離ればなれになった「エリアドールの七人」
そして冬季休暇で帰省した際に知らされた事実で距離を取るようになったミオ。
何とか前みたいに戻りたいと思いながらもイリアとの距離を縮めて楽しくなる清顕。
しかし戦争は次第に激しさを増していき、日常を侵食していき…

切ないなぁ…、本当に切ない…
愛しさと切なさと心細さを地で行くミオの恋心を思うと、
読んでいて胸が張り裂けそうになりました。
ミオは何も悪くないのに、ただ善良で家族思いで友情を大切にする良い子なだけのに。
何故こうも世界は彼女に優しくないのか…!

清顕を恨むのはお門違いだとは判っているんですけど、
ミオがあんなに家族への愛情と友情との板挟みで苦悩しているというのに、
お気楽にイリアとツーリングデートをして楽しんでいるを見ると、
お前もうちょっとしっかりしろよ…! と思ってしまうんですよね。
いや、清顕は清顕で頑張って成長していってるのも判るんですよ。
それでも、なんでしょうねこのもどかしさ…

この巻は本当に読めば読むほどミオへの想いが募ってくる1冊でしたよ。
ミオがもう少しズルかったりすれば自分を騙すことが出来ただろうに、
どこまでも真面目で賢く、そして清顕のことが好きで好きでたまらなく、
子供の頃の思い出を大切にしているからこそ取ってしまった最後の態度は、
本当に読んでて辛くなるほどに胸に来ました。
本当に切ない…

これからプレアデスで清顕との子供の頃からの思い出、
そして清顕と一夜を過ごした島でのぬくもりを糧に憎まれ役を演じ続けるかと考えると、
どこまでもミオが不憫でなりません。
お願いだから清顕だけはミオの表面の言葉を信じずに、
子供の頃からの見ていた彼女の本質に気付いて欲しいです。

それにしても空の一族ことウラノスの陰湿な手口には反吐が出そうになりますね。
ここまで見事に悪役な存在というのも珍しいですが…
しかし恋歌に出てきたゼノスがここで登場するとはなぁ…
ということは、この誓約の時代は恋歌終盤とほぼ同じ頃ということなのでしょうか。
それはそれで空の一族に恋歌の彼らが掣肘を加える可能性もあるわけで…
恋歌のTVアニメも楽しみですが、この先の展開も大いに気になります。
願わくばミオに少しだけでも良いから幸あらんことを…

:: 2013/2/23 土曜日::

■[ラノベ]きみのため世界すらも焼き尽くそう「とある飛空士への誓約」2巻

とある飛空士への誓約 2 (ガガガ文庫)
著者/訳者:犬村 小六
出版社:小学館( 2013-02-19 )
文庫 ( 275 ページ )
作者twitter:犬村小六 (inumura569)さんはTwitterを使っています
絵師サイト:ALL GREEN

「2巻の感想をネットにあげる際は、ネタバレに配慮をお願いします!」

と新刊を買ったら挟まってくる小冊子に著者コメントが書かれていた通り、
2巻にして誓約を交わし合った「エリアドールの七人」たちの正体が、
読者に対して詳らかになった訳なんですが…
うん、1巻の時点であからさまな配役に疑念を持ってて2巻の中盤から確信してましたけど、
それでもラストのヒキは予想以上にガツンと来ましたよ…
そうくるかー…

敵中翔破と夜間着水を成し遂げた「エリアドールの七人」たちの士官学校での日々。
マスコミやら社交界やらで多忙なれども模擬空戦での戦績に一喜一憂する七人の中、
清顕はどうしても敵機を落とすための引き金をギリギリの所で引けなくて伸び悩み、
ライバルであるはずのイリアの単独トップを許したままで…

その生来の性格から後一歩の所で足踏みしている清顕がもどかしかったですが、
その清顕の背を押して手を引っ張るイリアとミオのダブルヒロインが良いですね。
ミオは清顕と同じく秋津人の風習で大正時代の倫理観なので、
レトロな雰囲気さがある純情さが随所に見られて素晴らしいヒロインっぷりでした。

イリアも空戦という舞台で最高潮に盛り上がり、
清顕とだけ通じることが出来る多幸感に包まれる所はライバルポジションだからこそですね。
そしてイリアの朴訥すぎる性格を知っているからこその、
色々なギャップには萌えざるを得ない訳で有ります。

それにしても、だからここの2巻のヒキはなぁ…
1巻の時よりも俄然、続きが読みたくて仕方なくなってきましたよ。
でも2巻にしてまだ第一部なんですよね…
とある飛空士シリーズ最長とのことですけど、果たして完結までどれくらい掛かるんだろう…
それだけがちょっと気掛かりです。

:: 2012/9/26 水曜日::

■[ラノベ]七人の飛空士「とある飛空士への誓約」1巻

とある飛空士への誓約 1 (ガガガ文庫)
著者/訳者:犬村 小六
出版社:小学館( 2012-09-19 )
文庫 ( 335 ページ )
作者twitter:犬村小六 (inumura569)さんはTwitterを使っています
絵師サイト:ALL GREEN

「とある飛空士」シリーズの最新作。
今回はシリーズ最長にして最大スケールでお送りするとのことですので、
今まで以上に濃く熱い群像劇が繰り広げられることになると思います。

今回の舞台は世界観は同じだけど、レヴァームやバレステロスとは違う国々、
大瀑布を挟んでセントヴォルト帝国と秋津連邦、そして二つの間にある多島群で構成された地域が舞台。
恋歌に登場した「空の一族」が暗躍する世界で若き七人の学生たちが織り成す、
熱く気高き恋と空戦の物語。

七人それぞれに込み入った事情があり、冒頭で既に二人裏切ることが示唆されているし、
何よりそこかしこに伏線が張り巡らされているので1巻から既にドキドキですよ。
そりゃ、ある程度は予想は立てられるんですけど、だからこそ裏をかかれるのではという疑心暗鬼状態。
冒頭の語り部ですら、主人公格の坂上清顕であるかは分かりませんしね…

しかし幼馴染みのミオが報われないフラグに思えるのは昨今の風潮のせいなのか、恋歌のせいなのか…
というか、清顕が親同士の因縁があるイリアと初めはライバル的ポジションだったのが、
敵中突破という窮地で発揮される操縦技術から互いに認め合い、
更に島でのギャルゲ―的ギャップ萌えイベントが発動して急速に狭まったのがなぁ…
うーむ、二人には別のフラグが立ってるしこれは一筋縄ではいかないですよね。

誓約というタイトルからして分かるように今回は色々な約束が交わされています。
特にラストで高い空の下、友情を確かめ合った若い七人の約束が、
今後の物語にどういった方向性を持たせるのか気になって仕方ないです。
一体何巻まで続くのか分かりませんが、楽しみに待とうと思います。

:: 2011/10/3 月曜日::

■[ラノベ]大空のラストサムライ「とある飛空士への夜想曲」下

とある飛空士への夜想曲 下 (ガガガ文庫)
著者/訳者:犬村 小六
出版社:小学館( 2011-09-17 )
文庫 ( 376 ページ )
作者twitter:犬村小六 (inumura569)はTwitterを使っています
絵師サイト:ALL GREEN

現在劇場上映中の「とある飛空士への追憶」のスピンオフ的な「とある飛空士への夜想曲」
その下巻にして完結巻ですが、相変わらず凄かったです。

ライトノベルとは思えない骨太で男気が溢れすぎる内容で、
表紙からして萌えとは隔絶した雰囲気を醸し出しています。
とはいえ、「恋と空戦」が「とある飛空士」シリーズのテーマですので、
千々石とユキの二人の恋物語も綴られていますが…
うん…、相変わらず切ない終わり方でしたね…
どこか「イリヤの空 UFOの夏」を思い出す読後感でした。

上巻の頃から伏線が張られてますし、「追憶」「恋歌」にも伏線があるので、
大雑把な先の展開は読めるんですが、詳細が判らなくてもどかしいんですよね。
面白いから早く次のページを読みたいんだけど、
「もしかしたらあいつが死ぬかも…」「上官が判断ミスするかも…」
と予想が先にたってしまい、ページをめくるのが怖くなるんですよ。
でもやっぱり気になって先を読んでしまうんですよね。

特に千々石がユキと最期に会うシーンは胸がしめつけられるようでした。
負けん気が強くて酒癖悪くても、ユキが一途で健気で愛おしく、
そんなユキのことを戦争で焦燥感が募れば募るほど思い出す千々石もまた切なくて…
二人とも夢を叶えたはずなのに幸せになれない”戦争”という無常さが悲しかったです。

そんな悲しくて愚かしい戦争の中で、戦友と共に大空を駆け、
宿敵との一騎打ちの果てに多大なる戦果をもたらしたサムライの英雄。
不器用だったけど、誇り高く、何よりも幼馴染の少女を大事に想っていた、
そんな最後のサムライの生き様が熱い一冊でした。

:: 2011/7/21 木曜日::

■[ラノベ]撃墜王と歌姫が奏でるノクターン「とある飛空士への夜想曲」上

とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)
著者/訳者:犬村 小六
出版社:小学館( 2011-07-20 )
文庫 ( 264 ページ )
作者twitter:犬村小六 (inumura569)はTwitterを使っています
絵師サイト:ALL GREEN

とある飛空士シリーズの最新作の時代と舞台は追憶まで巻き戻って、
シャルルが任務を成し遂げた前後、天ツ上側からの物語を綴った追憶のスピンオフとも言える作品。
それがこの「とある飛空士への夜想曲」です。

そして主人公はかつてアイレスIIに搭乗していたシャルルを唯一撃墜した男にして、
最後までシャルルを苦しませたビーグルの真電乗り、千々石武夫。
60年前、国力が10倍のレヴァームに破れ臥薪嘗胆の日々を送る天ツ上に生まれ、
父親が死に、中学校に上がることも出来ず戦艦島で炭坑夫となり、母も失い1年が経った頃、
歌手を目指すベスタドの少女、吉岡ユキに出会うことで人生が流転。
飛空士になるという夢を持ち、類い希なる努力と才能によって駆け上がっていき、
そして開戦後、撃墜王となった千々石は初めての好敵手、海猫と出会う…

空を飛ぶことが何よりも大好きだったシャルルと違い、
空戦に取り憑かれ、敵機を撃墜することに歓びを見出すようになった千々石。
子供の頃に愛情をもって育てられず、感情が剥落していたファナと違い、
国民的歌手となり淑やかな表面を持ちながらも、内面は子供の頃のままのユキ。
どことなく似ているけど、間違いなく違う主人公とヒロインが奏でる、
運命の出会いと一時の別れのノクターンがこの上巻には詰め込まれています。

子供の頃から快活で、無愛想な千々石の相手を笑顔でして面倒見の良いユキが、
大人になって国民的歌手になっても子供の頃の約束を忘れずに、
何よりも誰よりも千々石のことを想っているのには胸を打たれます。
そして千々石も鈍いなりにもユキの心を察しながらも、
”戦争”という悲惨という言葉だけでは生温い環境で、
空戦に取り憑かれた自身の業が故に、ユキを遠ざけようとするのはやるせなく、
千々石の境遇を思うと胸を焦がさざるを得ません。

規律を重んじ、千々石を苦々しく思う強面の波佐見が、
美空(ユキ)の大ファンで、それに対しても千々石に嫉妬しながら、
いざ戦場となったら誰よりも千々石の実力を認めているが故に、
的確な判断を下して颯爽と駆けつける姿は格好良くて心が痺れましたね。

群像劇として、架空戦史として、そして何よりも恋物語として面白いこのシリーズ。
下巻では遂に海猫ことシャルルも出てきそうですし、
千々石とユキの二人がどういった結末を迎えるのかも含めて期待が高まります。
下巻は9月発売らしいので今から楽しみで仕方ないです!

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