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:: 2011/10/3 月曜日::

■[ラノベ]大空のラストサムライ「とある飛空士への夜想曲」下

とある飛空士への夜想曲 下 (ガガガ文庫)
著者/訳者:犬村 小六
出版社:小学館( 2011-09-17 )
文庫 ( 376 ページ )
作者twitter:犬村小六 (inumura569)はTwitterを使っています
絵師サイト:ALL GREEN

現在劇場上映中の「とある飛空士への追憶」のスピンオフ的な「とある飛空士への夜想曲」
その下巻にして完結巻ですが、相変わらず凄かったです。

ライトノベルとは思えない骨太で男気が溢れすぎる内容で、
表紙からして萌えとは隔絶した雰囲気を醸し出しています。
とはいえ、「恋と空戦」が「とある飛空士」シリーズのテーマですので、
千々石とユキの二人の恋物語も綴られていますが…
うん…、相変わらず切ない終わり方でしたね…
どこか「イリヤの空 UFOの夏」を思い出す読後感でした。

上巻の頃から伏線が張られてますし、「追憶」「恋歌」にも伏線があるので、
大雑把な先の展開は読めるんですが、詳細が判らなくてもどかしいんですよね。
面白いから早く次のページを読みたいんだけど、
「もしかしたらあいつが死ぬかも…」「上官が判断ミスするかも…」
と予想が先にたってしまい、ページをめくるのが怖くなるんですよ。
でもやっぱり気になって先を読んでしまうんですよね。

特に千々石がユキと最期に会うシーンは胸がしめつけられるようでした。
負けん気が強くて酒癖悪くても、ユキが一途で健気で愛おしく、
そんなユキのことを戦争で焦燥感が募れば募るほど思い出す千々石もまた切なくて…
二人とも夢を叶えたはずなのに幸せになれない”戦争”という無常さが悲しかったです。

そんな悲しくて愚かしい戦争の中で、戦友と共に大空を駆け、
宿敵との一騎打ちの果てに多大なる戦果をもたらしたサムライの英雄。
不器用だったけど、誇り高く、何よりも幼馴染の少女を大事に想っていた、
そんな最後のサムライの生き様が熱い一冊でした。

:: 2011/7/21 木曜日::

■[ラノベ]撃墜王と歌姫が奏でるノクターン「とある飛空士への夜想曲」上

とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)
著者/訳者:犬村 小六
出版社:小学館( 2011-07-20 )
文庫 ( 264 ページ )
作者twitter:犬村小六 (inumura569)はTwitterを使っています
絵師サイト:ALL GREEN

とある飛空士シリーズの最新作の時代と舞台は追憶まで巻き戻って、
シャルルが任務を成し遂げた前後、天ツ上側からの物語を綴った追憶のスピンオフとも言える作品。
それがこの「とある飛空士への夜想曲」です。

そして主人公はかつてアイレスIIに搭乗していたシャルルを唯一撃墜した男にして、
最後までシャルルを苦しませたビーグルの真電乗り、千々石武夫。
60年前、国力が10倍のレヴァームに破れ臥薪嘗胆の日々を送る天ツ上に生まれ、
父親が死に、中学校に上がることも出来ず戦艦島で炭坑夫となり、母も失い1年が経った頃、
歌手を目指すベスタドの少女、吉岡ユキに出会うことで人生が流転。
飛空士になるという夢を持ち、類い希なる努力と才能によって駆け上がっていき、
そして開戦後、撃墜王となった千々石は初めての好敵手、海猫と出会う…

空を飛ぶことが何よりも大好きだったシャルルと違い、
空戦に取り憑かれ、敵機を撃墜することに歓びを見出すようになった千々石。
子供の頃に愛情をもって育てられず、感情が剥落していたファナと違い、
国民的歌手となり淑やかな表面を持ちながらも、内面は子供の頃のままのユキ。
どことなく似ているけど、間違いなく違う主人公とヒロインが奏でる、
運命の出会いと一時の別れのノクターンがこの上巻には詰め込まれています。

子供の頃から快活で、無愛想な千々石の相手を笑顔でして面倒見の良いユキが、
大人になって国民的歌手になっても子供の頃の約束を忘れずに、
何よりも誰よりも千々石のことを想っているのには胸を打たれます。
そして千々石も鈍いなりにもユキの心を察しながらも、
”戦争”という悲惨という言葉だけでは生温い環境で、
空戦に取り憑かれた自身の業が故に、ユキを遠ざけようとするのはやるせなく、
千々石の境遇を思うと胸を焦がさざるを得ません。

規律を重んじ、千々石を苦々しく思う強面の波佐見が、
美空(ユキ)の大ファンで、それに対しても千々石に嫉妬しながら、
いざ戦場となったら誰よりも千々石の実力を認めているが故に、
的確な判断を下して颯爽と駆けつける姿は格好良くて心が痺れましたね。

群像劇として、架空戦史として、そして何よりも恋物語として面白いこのシリーズ。
下巻では遂に海猫ことシャルルも出てきそうですし、
千々石とユキの二人がどういった結末を迎えるのかも含めて期待が高まります。
下巻は9月発売らしいので今から楽しみで仕方ないです!

:: 2011/1/22 土曜日::

■[ラノベ]ずっと待ってる…「とある飛空士への恋歌」5巻

とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫)
著者/訳者:犬村 小六
出版社:小学館( 2011-01-18 )
文庫 ( 262 ページ )
作者twitter:犬村小六 (inumura569) on Twitter
絵師サイト:ALL GREEN

今回、空戦はありません。
けれども、感動はあります。

空族からの猛攻をクレアが取り戻した風呼びの力で凌ぎきったイスラだけど、
主力も壊滅してレヴァームからの救援はあれども苦しい中、
空族から初めて寄越された交渉は風呼びの少女と引き替えとした、
休戦条件だった…

クレアとカルの初恋は言うなれば狂おしいほどに燃え上がる情熱的な初恋。
大好きなみんなが住むイスラを守る為に赴くクレアと、
どうしようもない条件で、クレアと約束を交わすカルの決意。
約束を果たすため、何年もかかる困難の旅路を遂げ、
かつての名前を利用してまで突き進むカルの情熱的な恋には燃え上がります。

そしてそれだけでなく、もう一つ。
切なさに押しつぶされそうなほどに秘められた初恋。

子供の頃から一緒に居た、数え切れないほどの喧嘩をした。
ヘタレな兄を何度も助けたことがあるし、命を救われたこともある。
想いが溢れてきそうになり、夜の闇に助けられたこともある…

「――歌えない恋の歌もある。」

折り返しカラーでのこの言葉を目にした時に感じた予感そのままに、
胸が締め付けられそうなほどの切なさが心に満たされ、
あぁ、この作品は本当に「とある飛空士への追憶」と同じシリーズなんだなぁ、
と感慨深く納得しました。

初恋。
甘くて苦くて切なくて、どうしようもないほどに人を突き動かすその衝動。
そういった諸々を思い出させてくれる、珠玉のシリーズでした。
お勧めです。

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