私は基本的に漫画というものはエンターテイメントだと思っているので、
自尊心や自己顕示欲が透けて見えることが多いエッセイ漫画は極一部の例外を除いて苦手なんですが、
この漫画はその極一部の例外な上に、私の心の傷を見事なまでに抉ってきます。
普段は忘れていられたのに、この漫画を読むことでまざまざと思い出されてしまうのです…
作者の藤生さんの子供時代を描いたエッセイなんですが、
一応事実を元にしたフィクションということになっています。
ですが、自分の子供時代を重ねて読んでしまい、トラウマのかさぶたが剥がされて、
読めば読むほどとても痛い思いをするんですが…
かさぶたを剥がすのって痛気持ちいいところがあるじゃないですか?
だから、読んで共感して痛がってしまうんですよね…
一番「あるある!」と共感したのは兄と姉の部屋の状況を暗記した「少女A」です。
兄と姉のモノを借りたいけど貸してくれないので、
こっそり借りて完璧に元に戻すことでバレないようにするとか、
私もやっていただけにとても共感しました。
私の場合は兄が買ってたジャンプとマガジンを読みたいんだけど、
兄は頼んでも決して読ませてくれなかったし、
母もえりちゃん母と同じような対応をするだけなので、
諦めるしかなかったんだけど…
娯楽に乏しい田舎の子供にそれは無理だったので、
えりちゃんと同じように無断拝借&隠蔽工作するしかなかったのです。
そしてえりちゃんと同じようにバレる時はバレるので、
その時は兄から正拳突き(少林寺拳法初段)を食らって泣かされるのです。
それが兄という理不尽な身内の当たり前だったので、
この話にはメッチャ共感できたんですよね!
で、「みんなもそうだったよね?」と兄姉持ちの友人たちにこの話をしたところ
「うちはそんなヒドイ兄(or姉)じゃなかった」
「お兄さん、心狭すぎじゃない?」
とドン引きされました。
あれー? 兄っていうのはこういうのがふつうじゃなかったの…?
ファミコンのソフト買っても私には決してやらせてくれなかったし…
ドラクエを母方の祖母に買って貰った兄は、
自分がクリアしたら私にやらせてくれずに即売ってたし、
不機嫌にさせたら即殴ってくるもんでしたけど、
それがふつうじゃなかったんだなぁ…
他にも「14歳」での保護者面談。
私の母もお金がないからと高校受験は公立しか許してくれなかったなぁ…
私の場合は成績が優秀だったので問題なかったけれど、
それでも周りが全員私立受験をする中、公立一本だったのは私だけだったっけ…
私立受験日、学校に居たのは推薦が決まっている人か中卒ヤンキーくんたちだけで、
生徒が400人以上いながら他に公立一本の人は誰もいなかったっけ…
他クラスの先生には「なんで学校来てるの!? 受験は!?」と心配されたっけ…
あの時「親がお金が勿体無いからと私立受験させてくれなくて…」と答えるのは恥ずかしかったなぁ…
もちろん、大学受験も国立一本だったよ…
弟は私立受験させてもらってたのにね…
私とえりちゃんは違う人間なので、
私は漫画を描かないし、他にも違う経験も多いです。
でも、貧乏だから経験したアレコレとかにも似た経験が多いです。
うちの場合は父がパチスロで散財しまくったのが原因ですが、
父が数万円かけて手に入れてきたチョコを兄弟三人で貪るように分けたなぁ、とか。
もうね、本当に色々と心の痛い思い出をまざまざと思い出さされるのです。
ニュースになるようなヒドイ虐待家庭ではないけれど、
自分が普通だと思っていたのは普通じゃないんだな、と。
そう自覚させられる思いです。
正直、自分の痛い過去を否応なしに思い出すので読んでいると脂汗が出ますが、
それでも、面白いので読み進めてしまいます。
多くの普通の人の目には奇異な家庭環境に映るだけでしょうが、
私のように心に突き刺さりまくる人もある程度はいると思います。
そういった人に、是非届いて欲しい漫画です。
貴方の普通は世間の普通じゃないかもしれないけれど…
今、生きているんだから丸儲けじゃないですか。
それでいいのだ。
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