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:: 2012/11/28 水曜日::

■[漫画]そして物語は急転する。「紫色のクオリア」2巻

紫色のクオリア 2 (電撃コミックス)
著者/訳者:うえお 久光
出版社:アスキー・メディアワークス( 2012-11-27 )
コミック ( 172 ページ )
作者サイト:綱島志朗のケツバット日記
作者twitter:綱島志朗 (k2batto)さんはTwitterを使っています

1巻が出た当初は2巻は1,2年後かと思ってましたが年内に出ましたね。
これはまた嬉しい誤算ですよ。

そしてこの2巻から「紫色のクオリア」の本編たる「1/1,000,000,000のキス」が始まります。
そう、SFを扱ったラノベとしては屈指の評価を得た真骨頂が今ここに…!

ゆかりとガクちゃん、そして七美の普通とは違うけど平和な日常は、
ある日転校してきた一人の金髪美少女、アリスによって終わりを告げることに。
アメリカの天才が集う組織「ジョウント」から派遣されてきた彼女は、
数式を絵として認識して理解することが出来る天才で、
特異な目を持つゆかりを「ジョウント」にスカウトすることが目的で…

やはり綱島志朗さんのコミカライズは本当に神がかってますね!
原作からは文字から読み取るしかなかった場面場面でのキャラの心情が、
漫画という媒体は表情から読み取ることが出来ることで、
物語に一層の深みを与えてくれているんですよね。

ゆかりを「ジョウント」に勧誘する時のアリスの表情しかり、
ガクちゃんに対する負い目で追い詰められた表情をするアリスの表情しかり。
でも一番印象深かったのはゆかりがガクちゃんの言葉を受けての僅かな表情の変化ですね。
元々ゆかりは表情を持たなかったエピソードが冒頭で語られているだけに、
あの僅かな表情の変化に込められたモノを考えるとやりきれないものを感じます。

そして原作のうえお久光さんによって形作られるSF的世界観!
ゆかりによってもたらされた左腕に宿る携帯の機能を通して、
平行世界の自分と繋がることで無限の可能性を手に入れ、
ゆかりを救う為に光となって目標まで最短経路で突き進むガクちゃんの姿は、
正にSFですよ。

無限のガクちゃんの表現とか、漫画への落とし込み方はやはり一流と言わざるを得ないです。
かなり硬派な作品ですので通常の電撃大王作品とは一線を画しているので、
あまり一般受けはしないかもしれませんが、屈指の名作であることは確かです。
1巻だけでも充分面白い作品でしたが、
やはりこの「紫色のクオリア」という作品の魅力はこの2巻からだと思いますので、
是非ともこのまま最後まで読んでいって欲しいですね。

それと巻末の番外編ですが、extra:02はたぶん描き下ろしだと思うのですが…
まさか「紫色のクオリア」でここまで笑わされることになるとは思いませんでした。(笑
殺伐とした世界観に一発の目からビーム!
これは萌えるぜ…?(笑

:: 2012/2/29 水曜日::

■[漫画]あなたの瞳に映るのは「紫色のクオリア」1巻

紫色のクオリア 1 (電撃コミックス)
著者/訳者:うえお 久光
出版社:アスキー・メディアワークス( 2012-02-27 )
コミック ( ページ )
作者サイト:ケツバット祭り

原作である小説版「紫色のクオリア」はそもそも、うえお久光&綱島志朗のコラボ作品だったので、
漫画版を担当するなら綱島志朗さんしかあり得ないだろうと思っていましたが、
実際に綱島志朗さんが描かれると予想以上に素晴らしい内容に仕上がっていて、
小説版を読んでいた時以上の感動が胸の奥からこみ上げてきて自分でも驚きです。

タイトルに含まれていることから判るように「クオリア」という言葉がこの作品のキーワードになっています。
クオリアを簡潔&大雑把に説明すると、例えばこの作品の表紙は紫色ですが、
紫色というのは波長380-450 nmの可視光線という物理的な定義はできても、
自分が感じている紫色という感覚は主観的なものであり、他人と共有できるものではない、という感じでしょうか?

そしてこの作品のヒロインである毬井ゆかりは生物が全てロボットに見えるという紫色の瞳の持ち主。
主人公の波濤学ことガクちゃんは小さな頃から薙刀を習ってきたちょっとボーイッシュな女子中学生。
その名前からゆかりから見て男か女か判らなくて(何しろロボットに見えるので)、
その時のちょっとしたトラブルでガクちゃんはゆかりのその目のことを知ることに。
ガクちゃんは「友だち」として少しずつ、でも確実にゆかりのことを見守っていくことになるんだけど、
ゆかりの目の特異性からとある殺人事件の殺人犯に狙われることになって…

という小説版第1章までの展開が描かれているんですが、その描き方が素晴らしく上手い!
綱島志朗さんの実力を考えたら当然なんですが、散文的に書かれていたエピソードを見事に再構成して、
それでいて小説版の補足的な内容を描くことで既読組にも新鮮な面白さを提供しているんですよね。
特に殺人犯を「修理」するためにゆかりが取る手段が小説版では想像するしかなかったのに、
この漫画版ではハッキリクッキリ描かれているだけに衝撃は一入でしたよ。
いやはや、本当に素晴らしいな!

ゆかりが生物がロボットに見えるというのは実は文字にも表われていて、
ガクちゃんの腕を治すじゃなくて直すって言ってるんですよね。
でもロボットだから非生物なわけではないというのは内容を読めば一目瞭然なわけで、
結局この作品は女子中学生たちの友情物語だったりするんですよね。
そこがまた面白いのです。

しかしこの1巻は「紫色のクオリア」の本質の導入部に過ぎません。
一年前「魔法少女まどか☆マギカ」の終盤で多くの人が「紫色のクオリア」を連想したのは、
この後の「1/1,000,000,000のキス」があってこそなのです。
詳しいことは是非とも作品を読んで感じて欲しいです。
とはいえ、このままのペースだと単行本は1,2年後になると思いますので、
先に小説版を読むのもアリなんじゃないかな、と思います。
1巻を読む限り漫画版は更なる面白さを提供してくれると思いますし。

紫色のクオリア (電撃文庫)

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