■[漫画]漫画家族再生の物語「ど根性ガエルの娘」1巻
ど根性ガエルの娘 (1)
著者/訳者:大月悠祐子
出版社:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス( 2015-11-26 )
連載サイト:ど根性ガエルの娘
Kindle版:ど根性ガエルの娘 (1)
「妄想少年観測少女」や「ギャラクシーエンジェル」で知られる大月悠祐子さんですが、
大島やすいちさん一家と同じく漫画家族でもあるということはあまり知られていません。
旦那さんが「ちぃちゃんのおしながき」の大井昌和さんだけでなく、
実父である吉沢やすみさんはかつて少年ジャンプで「ど根性ガエル」をヒットさせた大漫画家。
しかしヒットさせた後の人生にはツラいものが待っていたのでした…
吉沢やすみさんがスランプに陥って、現在に至るまでは、
【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】第八話:「ど根性ガエル」吉沢やすみと練馬の焼肉屋 – みんなのごはん
で軽く知ることが出来るのですが、
この「ど根性ガエルの娘」ではそれをより赤裸々に知ることが出来ます。
さすがは「妄想少年観測少女」の作者らしいと思い知るほどの生々しさです。
20世紀末、大月悠祐子さんが原稿が落ちそうな父・吉沢やすみを迎えに行ったのはパチスロ。
そして漫画家である吉沢やすみは原稿を落としそうなのに頑なに席から離れようとせず、
遂には心配する娘にこのように言い放つ始末。
そこにはかつて栄光を手にした漫画家の姿はなく、
濁りきった瞳を持つただのパチスロ狂の姿でしかなかった…
そんな吉沢やすみさんを父に持ちながらなぜ大月悠祐子さんが漫画家を目指したのか、
正直言って不思議でしかなかったのですが、
巻末に収録されている父娘対談を読んでやっとわかりました。
そうか、全ては父を支え、家族を守ってきた母がいたからこそなんだ、と。
その母の偉大さがこれでもかと判るのが「ど根性ガエルの娘」です。
まぁ、その偉大な母が実は単なる「だめんず好き」というのには脱力しますが、
実際に偉大なのは確かだと思うんですよ。
いやー、ホントよく我慢されたと思うんですよね。
そして吉沢やすみさんも本当に大変だったと思うんですよ。
人生初の作品がヒット作になってしまったというのが一番の幸福であり不幸なのでしょう。
その後の苦悩やプレッシャーは一度は自殺を考えるほどで、
そこから嫁に支えられて駅の清掃員などをやってみたりと、
少しずつまともになっていくのはほっとするものがあります。
しかし吉沢やすみさんはやっぱり漫画家なんだと思うんですよね。
ご自分の恥部(と言っていいのか微妙ですが)を赤裸々に出して、
それを良しとするあたりはやはり漫画家という名のエンターテイナーだな、と思うわけですよ。
特に当時のジャンプ編集長に大人のお店に連れて行ってもらい、
プロの女性に初めてを捧げたという話を娘に語ったりと赤裸々にもほどがあるというか。
いや、めっちゃ面白かったんですけどね!(笑
巻末の対談や田中圭一さんからの寄稿まで含めて面白かったです。
次の2巻では吉沢やすみさん夫婦のなれそめ話があるみたいですし、
何よりぴょん吉が救ってくれた今に至るまでの物語も残っているので楽しみですね。
Webで連載しているので興味がある人はそちらもどうぞ。
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