本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 短編集3 12月14日発売!
特典SS他、新規短編&中編も多数収録!
:: 2024/8/13 火曜日::

■[ラノベ]時をかけるダンケルフェルガーの女「本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生」1巻

前世の本須麗乃時代に得ていた本に囲まれた生活と、
現世のマイン時代に得ていた家族愛に包まれた生活。
かつて持っていたけれど、家族を守る為に貴族のローゼマインになって失っていったものを、
最後にはついに取り戻して見事に完結した「本好きの下剋上」
本作はその後をローゼマインの親友であるハンネローレの視点から綴った外伝の1巻になります。

注:以下はネタバレ全開の感想になります。

プロローグはハンネローレの筆頭側仕えのコルドゥラ視点ですね。
子供の筆頭側仕えは両親の側近から選ばれることが多いのは知ってましたが、
コルドゥラは元々ジークリンデの側仕えだったんですね。
元主従の二人から見たハンネローレの問題点が列挙されていますが、
大人視点から見てみればハンネローレの未熟さは一目瞭然ですね。

ただ、ハンネローレを擁護することもできるのですよ。
エーレンフェストの祝勝会に参加した時は、
お友達のローゼマインが「王命で引き裂かれた想い人を助ける為に礎を奪う」という
愛読しているフェルネスティーネ物語以上の恋物語を見せられた直後な上に、
ずっと憧れていた恋物語の作者であるエラントゥーラ様に会うことができたため、
ハンネローレ史上、一番の恋物語フィーバーが起こっていると思われるのですよ。
だから自分の恋を何とかしようとは全く頭に思い浮かべられなかったんだろうな、と…w

ジークリンデは策士としての腕が見事なのでアドルフィーネを賞賛していますが、
コルドゥラが言うように、ハンネローレは魔力量と戦闘能力に適性があるのですよね。
これからコルドゥラが言うような事態が起こるんですから、
筆頭側仕えとして主のことをよく見ていると思います。

ジークリンデも母として、無責任で能力不足なジギスヴァルトとの婚姻を避けたり、
節操なしなアウブ・ドレファンヒェルの縁談から守る為に、
そして、ハンネローレが自分で選べるように婚約者ではなく、
婚約者候補を二人見繕っているあたり、とても親の愛だなぁ、と思うのですよ。
ヴェローニカのような独善的で一方的な親の愛の縁談押し付けとは違いますよ。
ジークリンデはとてもまともな母親だと思います。
それをハンネローレが気付けるのはいつの日なのかな…?

そしてハンネローレ視点で語られる入寮からの本編ですが、
前作からのファンにとっては知りたかった情報が色々と出てきてホクホクですね。
ローゼマインの親友だと自他共に認められたハンネローレが苦労を背負いこむことになってますが、
この世界の貴族は権利と責任はワンセットなので仕方が無いですよね。
責任だけ放棄しようとする愚か者はフェルディナンドがくしゃっと叩きつぶしちゃったので、
これからは多少マシになると思いますよ、ハンネローレ様。

ツェントとなったエグランティーヌは粛清の責任を取るべき実家のクラッセンブルクではなく、
功績が大きいローゼマインを重要視しているのには安心しましたけど、
そのせいでエーレンフェストとハンネローレに縁談が殺到しているのはとばっちりですね。
他領のアウブは神殿改革する必要性と切実性は領主会議で理解したのでしょう。
ただ、どうすれば良いのかは全くの知見がないので、知っている相手にやらせたいんだけど、
エーレンフェストは今後数年は嫁入り&婿入りのみと定められているので、
ハンネローレに縁談が殺到しちゃうのは本当に可哀想だな、と思います。

貴族院に入って早々にダンケルフェルガーのダンケルフェルガーらしさが全開で呆れましたけど、
「シュタイフェリーゼより速く!」
という言葉がローゼマイン発だということは知られてないみたいですね。
おそらくローゼマイン本人は特に気にしないでしょう。
むしろ、それで更に崇められてディッターを吹っかけられる方が迷惑するでしょうね。
エーレンフェストにはディッターを吹っかけないという約定は結ばれたけど、
アレキサンドリアとは結んでないですから…w

ラザンタルクが精一杯の求愛の言葉をハンネローレに捧げてますが…
全く響いてないのはちょっと可哀想ですね…
ハンネローレはラザンタルクがハイスヒッツェと似ていると評していましたが、
おそらくそれは正しいです。

ハイスヒッツェは自分の常識と十年前の記憶を根拠に動いたせいで、
結果としてフェルディナンドに盛大な迷惑を掛けました。
ラザンタルクも自分の常識と幼い頃の記憶を根拠に今のハンネローレを見ずに求愛したせいで、
ハンネローレは迷惑しているんですよ。
悪い子ではないんだけど、ちゃんと相手を見て、理解しないと、何事も上手くいかないと思うのです。
ダンケルフェルガーの騎士が持つ宿痾なのかもしれませn。

それに比べるとケントリプスはハンネローレのことをよく見ていると思うのです。
ハンネローレが幼かった頃の思い出はしっかりと大切にしていながら、
ローゼマインと出会ってどのように成長してきたのか、理解できていると思うのです。
ある意味、本人以上に理解できているのではないかな、とまで思います。

そして異母弟のラオフェレーグですが…
彼は前作では継承の儀式に出席を見合わせられたのも納得の馬鹿ですね。
幼い頃から最上級の教育環境を得られて10年間みっちりと教育してこれというのが…
身分を笠に着て他者に自分の傲慢を強要しようとするあたりは、
とてもレスティラウトに似ていると思いました。
ただ、レスティラウトの根底には一応他者への優しさもありましたけど、
ラオフェレーグにはそういったものが全く感じられないのがねぇ…

進級式と親睦会ではラザンタルクがTPOを弁えずに自分本位で口説いてますが、
そういうところがあかんのやぞ、と思ってしまいますw
ブルーメフェルトとコリンツダウムは二つの領地のアウブの性格が出ているのは予想通りでした。
そして一年も経たずに学生の心をつかむローゼマインはやはり規格外ですよね…
多分、歓迎のお礼としてフェシュピールを弾いて祝福を送ったり、
慈悲と利益を振りまいて、学生の成績を上げる方針を打ち出したり、色々とやったんでしょうね。
うーん、詳細を知りたいけど、続編で書かれたりしないのかな?

親睦会でのローゼマインの配置ですけど、
おそらくハンネローレの予想通りフェルディナンドが裏に居ると思います。
というか、エグランティーヌの施政はフェルディナンドの監視が常についていることでしょう。
魔石恐怖症のローゼマインのために魔石部分を覆い隠すように婚約魔石を装飾したりと、
フェルディナンドはとても過保護ですからね。

アナスタージウスは苦言を呈しているけれど、
ローゼマインもハンネローレも巻き込まれるだけなんですよ。
それでも大きな事態が起こってしまうのが困ったものなのです。
むしろ、そのような事態に巻き込まれながら、
色々と奮闘している二人を褒めてあげて欲しいくらいです。
巻き込まれる資格すら得ていない王族たちの無能さこそを反省して欲しいものです。

ヒルデブラントは今のところ大人しいですけど、
本人がどこまで反省しているのかは現時点で未知数ですね。
レティーツィアはとても反省しているように見えるし、
これからも苦労を背負い込みますから頑張って欲しいです。
ヴィルフリートは後述しますが、相変わらず脳天気に見えるのに比べて、
シャルロッテは中継ぎアウブを任されているので大変でしょうね…

座学の講義で会ったローゼマインのご機嫌さを即座に
「図書館か本について何か考えている」と察することができるとか、
ハンネローレもローゼマインの親友らしい理解度ですね!w
そして実技の講義で即座に動いたオルトヴィーンは本当に有能です。
本当に有能な領主候補生とはどういうものかという、お手本のようです。
ドラえもんにおける出木杉くんのような印象を受けます。

領地としての利をしっかりと押し出している上での求婚だし、
ハンネローレの実力と性向を把握しているし、
何よりもヴィルフリートへの恋心まで確信を持っているだなんて、本当にやり手すぎる。
それでいてついうっかりと本気の恋心を見せてしまうんだから、
そりゃもうハンネローレは大変ですよね…

しかしハンネローレもローゼマインと同じくらい殿方の気持ちに鈍感というのは、
ある意味正しいけれど、ローゼマインもハンネローレには言われたくないあろうなぁ…
と思うくらいに中々に酷いものでしたね。
まぁ、ラザンタルクが恋物語とか読んで勉強してこなかったのも悪いと思いますw

髪飾りの件については、ローゼマインとハンネローレの挿し絵が有ったのが一番助かりました。
一年前とは逆になった身長差もそうですが、
お揃いになった髪飾りとローゼマインの新しい色のマントに胸元を飾る婚約魔石と、
読者が見たかった箇所が全部描かれていて大満足でした。

来年の卒業式におけるローゼマインの展望は、言われて見ればその通りなんだけど…
学生どころか現代の貴族の常識では計れない心配をせざるを得ないとか、
ローゼマインは本当に規格外すぎますよね。
ただ、それも王族がまともに機能していたらこんな心配をする必要がなかったんですけどね。
次に奉納舞or御加護の儀式で始まりの庭に行けるのはメルヒオールかなぁ…?

それにしてもこそこそと小声で心配するのは良いんだけど、
下手に情報を零してしまったために周囲に邪推させる材料を与えてしまうあたり、
ヴィルフリートは本当に迂闊ですよね…
どうしても「そういうとこやぞ」と思ってしまいます。
悪い子ではないんですけども…!

ローゼマインとハンネローレがお茶会でお互いの領地の情報を小出しにしてやり取りするのは、
二人ともちゃんと領主一族してるなぁ、と感心しました。
何だかんだでローゼマインも教育の成果が色々と出ていると思うのですよ。

でも、特殊な環境で育ったので、自分を客観視できていないのは相変わらずで、
養子縁組を歌った曲が恋歌と誤解されているのに気付かないあたりは変わらないですね。
そう言えばフェルディナンドがアーレンスバッハで歌った曲も誤解されましたっけ。
遠回しに言う貴族文化は誤解されやすいということが多々あるのかもしれません。

ヴィルフリートに纏わる王命に関する噂と根回しが王族の領分というのは理解できますが、
おそらくエグランティーヌたちは要望されない限り動かないでしょうね。
勝手に動いて迷惑を掛けたらいけないし、それに他の仕事で多忙でしょう。
むしろ王族に要望を出さないヴィルフリートの方に問題があるように思えます。

ローゼマインは今だからと色々と内情をぶっちゃけてますが、
確かにヴィルフリートとの婚約はお互いにとっては苦痛の多いものでしたからね。
それを憧れの婚約だと誤解させていたのがフェルディナンドの過保護な贈り物だったあたり、
色々と罪深いなぁ、と思います。
まぁ、その婚約を大切にせず、魔力圧縮を必死にしなかったヴィルフリートの罪も大きいのですが…

ローゼマインが貴族院に来て寂しいと感じる理由ですが…
本当の貴族と会えないのは前と一緒だけど、一度再会できているだけに寂しさも一入なのか。
義理の兄妹が居ないから寂しさが大きいのか、
それとも心を通わせたフェルディナンドと離れているから寂しいのか…
うーむ、妄想が広がりますね。

そして喧嘩の事情聴取で語られたケントリプスの想いですけど、
彼は彼で色々と抱え込んでいることがよくわかりました。
文官という特性上からか、私はフェルディナンドと比較してしまうんですよ。
そして比べてしまうとどうしてもケントリプスの未熟なところが見えてきます。

大切な相手を守る為に魔術具を準備するという発想は同じでも、
フェルディナンドはローゼマインの心が壊れないように「相手が死ねない魔術具」を作るのに、
ケントリプスはハンネローレが絶対に負けないように「相手を殺せる魔術具」を作ってしまうんですよ。
それが故に肝心なところで使って貰えないんですよね…
守りたい相手への理解度の差が明暗を分けたのだと思います。

ただ、この2年で理解が深まったのか、これからの展望については予想は正確だと思います。
とはいえこの時点ではこの後にあんなことが起こるとは予想できないあたり、
まだまだローゼマインと関わった時の規格外さが理解出来ていないんですよね。
そしてそういった事態に対する処世の仕方や事前準備も、
フェルディナンドに比べると大きく見劣りするのが悲しいところです。

自分の恋心と領地へもたらせる利のバランスの袋小路に入っていたハンネローレだけど、
思いがけず異母妹とメルヒオールの縁談の話を聞いたことで、
一気にブレーキが壊れた暴走特急になりましたね。
本当に、一度決めたら止まらず譲らないという周囲の評は間違いでは無かったです。

それにしても思うのはヴィルフリートの脳天気さですね。
友人の恋を応援しようという気概は良いと思うのですが、
致命的なまでに情報収集が出来ていないのが露呈してしまった上に、
ローゼマイン以上に他領にエーレンフェストの内実をバラしまうのはどうなんでしょう…
ヴィルフリートはとても誠実ではあり、そこは美点だとは思うのですが、
それは領主候補生である上では致命的であると思うのです。

ただ、正しい情報を流すことでエーレンフェストの特殊な事情の理解が得られたのは幸いでしたね。
ヴェローニカがやったことは大領地からしても常識外れの非道なもので、
ヴィルフリートはその被害者というのは、ある意味で正しいです。
その影響は多岐にわたっていますが、まさかハンネローレの恋心にまで影響を与えるとはねぇ…
ヴェローニカは本当にどこまでも迷惑を掛ける毒親だと思います。

そしてここで唐突に女神が降臨するわけですが、
ドレッファングーアはメスティオノーラと違ってお願いに来ている立場もあってか、
マインではなく、ローゼマインと呼んでくれるし、
協力してくれたハンネローレにお礼をしてくれるあたり、とても良い女神だとは感じるんですが、
前作では怖いところもあるみたいなことを言っていたので、
今回は彼女が怒らなくて少し安心しました。

女神の御力で精神だけで一年前に戻ったハンネローレですが…
彼女が即座に動いてしまった事情はわかるんですが、
結果だけ見ると、情報を集めずに拙速に動いて失敗するダンケルフェルガーの典型例でしたね。

この時のヴィルフリートは尖ったところが有りまくりで、
周囲からは散々けなされて、側近が解任されたりとささくれ立っている真っ最中ですからね。
アウブ・エーレンフェストになって欲しいと言ってきたハンネローレは敵認定されたのでしょう。
いやはや、本当にこの時のヴィルフリートは本当に未熟だと思います。

それに比べてエグランティーヌはバランス感覚に優れているんですよね。
お互いの事情に理解を示した上で、やらせるべきことをきちんとやらせるあたり、
この頃からツェントとなる資質は充分にあるのだと思わせてくれます。
まぁ、本人はツェントになることを望んでなかったのでしょうが…

そしてコルドゥラからの冷静な指摘ですが、ある意味正しいです。
ヴィルフリートは結果として騙したようで申し訳ないから再戦したいと考えていたんですよ。
レオノーレたちに却下されただけなので、誠実ではあろうとしたのです。
ですが、次期アウブという言葉の重みを理解していない浅慮であるのは正しいです。

それにしても一年前はハンネローレはこれだけ苦労していたとは…
元凶は間違いなくレスティラウトの横暴な嫁盗りディッターだというのに、
それに対するケアは側近二人のケアだけ、というあたりがレスティラウトは傲慢だと思います。
大領地のお坊ちゃんとして育てられたから、そんなメンタルなのかもしれませんが、
そんなことだと、将来フェルディナンドにボッコボコにやられそうな未来しか見えないのですが…
大丈夫なのでしょうか?

ラストでは縁結びの女神リーベスクヒルフェが気を利かせたせいで、
多くの求婚者が列を成してやってくるという大変な事態に陥りましたね。
シチュだけみると乙女ゲームみたいですけど、
ハンネローレ当人にとってはそれどころではないでしょうw
神々と関わると大変なことになる、というのがよく理解できたと思います。
今後はローゼマインに対する理解も捗りそうですね!

エピローグはケントリプス視点ですが、彼も苦労性ですよね~…
ダンケルフェルガーの文官とはそういった性分の人が多いのかもしれません。
彼の視点で見る女神の降臨のアレコレでは、ヴィルフリートが有能に見えるから驚きますね。
ただ、ローゼマインがアーレンスバッハへ攻め込む時に背中を押した時もそうだけど、
緊急事態に動じず、果断に動けるのはヴィルフリートの得がたい資質だと思うのですよ。
問題はその資質を磨かず、欠点を放置していた彼の教育係の怠慢なだけで…

「閑話 アウブの定時報告」は前作のフェルマイファン向けの短編ですね。
フェルディナンドの説教臭さは相変わらずだけど、
優しさと過保護さがマシマシになっているあたりがニヤニヤできると思うのですよ。
側で見守っているリーゼレータは役得だと思います。
これがハルトムートとクラリッサにバレたら、
中央に一緒に来て欲しいとおねだしした時みたいに、めっちゃ嫉妬してきそうですよね…w

ラザンタルク視点の短編は、彼がただのディッター馬鹿なだけではなく、
ハンネローレのことが好きな馬鹿、というのがわかる内容で面白かったです。
おそらく2巻に収録される本編を読めば理解できるんですが、
1巻だけだとただのディッター馬鹿であるように思えてしまいますからね。
良いフォローだと思いますよ。

逆に金粉、もといジギスヴァルト視点の「コリンツダウムの執務室にて」は…
金粉はどこまでいっても無能な馬鹿だなぁ、というのが凝縮されていて酷かったです…w

まず、本人が今でも王族気分のままなのが酷い。
就任式の時にローゼマインに指摘されてたのに、まだ修正できてないし、されそうもない。
自分以外は全て自分に傅いて献上すべきだと考えている傲慢さに陰りが見えないから、
ジークリンデの思惑に全く気付けない馬鹿さ加減が読者に浮き彫りになっているんですよね。

ナーエラッヒェもジギスヴァルトに第一夫人を求める言葉を読む限りだと、
ジギスヴァルトと同じ「責任と苦労は背負いたくないけど、愛と実利は欲しい」
と言っているようにしか見えないんですよね。
ある意味似た者夫婦なのかもしれません。

ジギスヴァルトはローゼマインやアドルフィーネを配慮が足りず、無神経で非常識だと考えてますが、
客観的に見てその言葉はそのままジギスヴァルトに熨斗を付けて返すべきでしょう。
次期王の王子という立場だったからそれがギリギリ許されていただけで、
その立場を失った今だと糾弾されて当たり前なのに、そこに全く理解が及んでいない。

むしろ、女神の化身となったハンネローレならメスティオノーラも降臨させられ、
自分の為のグルトリスハイトを貰えるとでも思っているのかもしれませんが…、
本当に認知が歪んでいるなぁ…

そもそも未だに次期王だと思っている時点で超弩級の馬鹿だと思うのですが、
それを周囲が正そうとしていないあたり危なすぎますよ。
ディートリンデがそれをやったら、不敬だとして処刑される予定だったのを忘れたのでしょうか?
自分は王族だからその対象外と考えているようにしか見えませんが、
ジギスヴァルトは既に王族ではない、という理解すらできてないのが一番の問題ですよね。

とはいえ、グルトリスハイトがないままにツェントとして君臨しようとして、
政治力を磨いてきたのは間違いないので、根回しや都合の良い噂の流布の手腕は見事ですね。
ラオフェレーグというダンケルフェルガーの癌も既に把握していて都合よく利用とするあたり、
舐めてかかっては駄目な馬鹿だとは思います。

ただ、身内である父と弟はそういった特性を理解しつくしているので、
嫁盗りディッターでは各所に対策されて、ボッコボコにされそうだな、と思います。
ツェント・エグランティーヌが公式に裁くアウブ第一号にならないと良いね…!

特典SSはヴィルフリート視点でしたが、これもまた読み応えがありましたね。
バルトルトを放置していたことがいつか断罪されるとは予想していましたけれど、
五年生が始まる前どころか、領主会議直後に引導を渡されていたとは思いませんでした。
まぁ、それくらいダメダメだったということなのでしょう…

ヴィルフリートは優しくて素直なんだけど、側近にそれを利用されやすいんですよね。
側近達にとって都合が良い主となるように教育された結果、
情報収集が疎かになり、情報の取捨選択を誤り、他責思考に陥ったんですよね…
それもこれもヴェローニカに教育され、オズヴァルトを付けられたせいでしょう。

それでも、今まで何度も挽回のチャンスを与えられてきたのですよ。
一日神殿長で自分の未熟さを見せつけられて再教育の機会を与えられ、
白の塔へ入った罪を咎められてもローゼマインの取りなしで許され、
嫌われている元凶のオズヴァルトを辞任させて更生の機会を与えられ、
バルトルトの暗躍に気付けなくても側近を介して忠告をしてくれて、
今回もラストチャンスでライゼガング系貴族の教育者を入れる打診をされたくらいです。
親の愛としては、これ以上ないほどでしょう。

ですが、ヴィルフリートはそのチャンスを悉く逃してきたし、
最後のチャンスも自分には無理だと断ってしまいました。
本編で書かれていた通り、ローゼマインはハッセやローデリヒといった課題を乗り越えて学習してきたし、
おそらくシャルロッテも同様の試練を乗り越えてきたんだけど、
ヴィルフリートだけが忌避して脱落したんですよね…

側近を守れるならギーベで良いと考えてるみたいですけど、
アウブの側近、という輝かしい将来の展望を抱いていた側近達からすると、
領主一族の側近ですらなく、ギーベに協力する文官や騎士という立場が用意されたとしても、
彼等がそれで納得するとはとても思えないんですよね。
本当に、フェルディナンドが昔に指摘した通り、
先のことが見えてない子供だと思います。
次の2巻では更にやらかしてしまいますからね。
ヴィルフリートは何でもローゼマインが悪いと思っていたのでしょうが、
今までどれだけフォローされてきたのかを実感するのはこれからだと思います。

それとドラマCDの特典SSですが、こちらではレスティラウトが冒頭から父親から説教されてましたが、
それでもまだ、嫁盗りディッターを仕掛けた責任の大きさを感じていないように思えます。
エーレンフェストとの常識の齟齬を解消しようともせずに強引に仕掛けて、
ヴィルフリートを騙してサインを書かせた悪辣さを全く反省していないんだよなぁ…

そのしわ寄せを自分で請け負おうとは全くしていない上に、
エーレンフェストに被せず、自分だけ負担するハンネローレを見てイライラするとか、
本当に困ったお兄ちゃんだなぁ…
ジルヴェスターは大領地相手だから遠慮しているのかもしれないし、
何だったら、レスティラウトがアウブになってからこの件を持ち出して仕掛けるつもりかもしれません。
それを警戒しているから、ヴェルデクラフは厳しいのではないかな?

それというのもジルヴェスターは嫁盗りディッターの本質をクラリッサから報告を受けていると思うのですよ。
ローゼマインの心の平穏と、ハンネローレの望みを叶えるためにローゼマインには黙っているだろうけど、
側近仲間と保護者にはしっかりと報告しているのではないかと思うのです。
もしかしたらシャルロッテも知っているかもしれません。
そういった内幕は次巻以降で明らかになるのではないかと予想しております。

それはそうと二歳児の時のハンネローレはとても可愛いですね!
舌っ足らずでレスティラウトに置いていかれる涙目の幼女とか、可愛すぎでしょう。
これを無視できるとかレスティラウトは酷いお兄ちゃんですよ。
でもまぁ、こういった兄妹はどの世界でも見ることができるんですけどね。

そんなレスティラウトの第一夫人に誰がなるのかだけど、
レティーツィアが候補に入っているのには驚きましたが、納得ではあります。
現時点では王命があるので無理そうだと認識しているのは安心ですけどね。
あの王命を何とかしようとしたら、絶対にフェルディナンドが邪魔するでしょう。

そしてハンネローレとローゼマインが揃うと厄介事が起こると予想するのは間違ってないんだけど、
二人とも巻き込まれているだけで、二人に責任は殆どないんですよ。
むしろ、二人が厄介事を何とかできる限り平穏に収めているくらいなんですよ!
よくやったと褒めてあげるべきだと思います!

この続きは現在も連載中で完結していないので、続きを読みたくてヤキモキする日々です。
今年はまだ、ふぁんぶっくと短編集も出ますし、
第三部のアニメ化や、引き続いてのコミカライズのお仕事もありますからね…
香月先生もお忙しいとは思いますので、無理をせず書いて欲しいものであります。

余談。

女神から「命を奪うな」という命令が出ている中で、
ヴィルフリートがどうやってバルトルトを処刑するのか?
という疑問が出てきたんですが…
やはり名捧げ石を使って
「バルトルト、自害しろ」
「…ありえない… この私が…」
とかやるのでしょうか!?
ちょっと気になりますw

:: 2024/5/16 木曜日::

■[漫画]王子の告白「本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第四部「貴族院の図書館を救いたい!」」8巻

図書館シュミルを巡って勃発したダンケルフェルガーとの宝盗りディッターで勝利したローゼマイン。
再戦に燃えるダンケルフェルガーには関わりたくないんだけれど、
アナスタージウス王子には経緯の説明をする必要があるのでソランジュ先生と共に呼び出される事に。
その際にアナスタージウス王子からは一つ密命が下されて…

8巻の見所は2点ありますね。
まず1点は側近でありながら問題児であったトラウゴットの処遇を巡る問題です。
宝盗りディッターでも命令違反の猪突猛進を見せて、
自分の力を誇示したいだけの脳筋バカっぷりを発揮していましたが、
この8巻では主を尊重できない側近失格っぷりを露呈させたため、
祖母であるリヒャルダに厳しく叱責されるだけでなく、側近辞任を強要される始末です。

それだけやらかしまくっているというのに、
全く自分の処遇を理解していないトラウゴットの表情が本当にムカつくんですよね…w

この時のトラウゴットの思考を表情から推察すると、
「騎士でもない、一年生の、しかも虚弱な女の子である従妹に言っても理解できないだろうけど…」
っていう、無礼&驕った考えをしているんじゃないかな、と感じちゃいますね。
そういった顔をしてますよ、トラウゴットは!

ローゼマインに指摘されたら表情を取り繕うくらいはできるみたいだけど、
それでも随所に性根が表情に滲み出てしまっているのがよくわかりますよ。
これは教育した実父の悪い影響が出ているんだろうなぁ…
特にダームエルを侮っているトラウゴットはダメですね。
一発アウトなやらかしですよ。

そしてギリギリセーフだったのがハルトムートですね。
トラウゴットを糾弾することに関しては上級貴族の間では情報の根回しが有ったであろうことが、
リヒャルダの解任動議を出された時のそれぞれの表情でわかります。

レオノーレは主であるローゼマインがどう動くのかを注視していましたが、
ハルトムートは情報を出すことでローゼマインがどう考えて、どう判断するのか。
そしてその情報から、今後ローゼマインをどう教育するのかを考えているように見えました。

でも、実際のところはハルトムートは一年生のローゼマインを教育する立場ではなく、
主であるローゼマイン様に仕えて、教育を受ける立場であることを痛感させられたかと思います。
暗躍しそうな問題児のハルトムートの手綱をしっかりと握ることができるローゼマインを見て、
安心しているようなレオノーレも印象的でした。

そしてもう1点の見所が、アナスタージウス王子の直接の求愛です。
ローゼマインから齎された情報と、聞き入れるのが難しい貴重な助言を受けて、
勇気を出して直接の求愛をしたアナスタージウス王子は格好いいですよ!

この話は完全に少女漫画の世界ですよ。
前巻がバトル成分多めの少年漫画みたいなディッター尽くしだったのに、
この8巻では糖分過多な少女漫画してましたよ。
愛する女性のために勇気を出して行動し、
愚直に努力を重ねるアナスタージウス王子のことは嫌いになれないんですよね。

ただ、私はこの時のエグランティーヌのことを、
アナスタージウス王子の情熱的な告白に絆された少女だと思ってたのですが、
書き下ろしSSを読む限りだと、決してそれだけではなかったんだと痛感しますね。
本当に、骨の髄から領地のことを考えて行動する貴族なんだなぁ、と思わされます。
アナスタージウスに恋したわけではなく、自分の望みが叶いそうだから手を取ったのか…
なるほどなぁ…

それにしてもエグランティーヌも述懐してましたけれど、
エグランティーヌ本人に次期王を決めさせるように動いたトラオクヴァール王は、
本当にこの頃から責任を負いたくなかったんだろうな、ということが透けて見えますね。

ツェントとして責任をしっかりと持っているのならば、
先代アウブ・クラッセンブルクの思惑を考慮に入れるにしても、
ジギスヴァルト王子に嫁ぐように働きかけるべきなんだけど、それもしないんですよ。
エグランティーヌの希望に任せるという名の責任転嫁をしているだけなんですよね…

トラオクヴァール王の苦労を思うと同情の余地はあるんだろうけど、
ローゼマインが取り持たなかったら、また政変が起こっていただろうし、
本当に王として失格だよなぁ、と思います。

さて、次巻からエーレンフェストへの帰還ですね。
下町メンバーと会えるでしょうし、ローゼマインの心を癒して欲しいところですが…
色々とあるので心を強く持って欲しいものです。

:: 2023/12/19 火曜日::

■[漫画]祈念式の旅路「本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第二部 「本のためなら巫女になる!」」10巻

農作物に実りをもたらす魔力を配る祈念式を行うために農村へと向かうマイン。
しかしそこに予定にない青色神官ジルヴェスターが同行することに。
保護者のフェルディナンドと騎士団長のカルステッドも加えての珍道中になったけれど、
マインは平民ということもあって色々とトラブルがやってくるのだった…!

エーレンフェスト領内全ての祈念式をマイン一人にさせるとか、
今考えるとかなりのメチャクチャですよね。
それでいて収穫祭では他の青色神官にやらせるつもりだったとか、
仕事を全部押し付けて給料だけ貰うつもりのブラック企業、もといブラック神殿ですよ。
とはいえ、ここで真摯に神に祈っていたお陰で後々マインは助かるんですけどね…

平民の青色巫女見習いということで常識が足らないマインが、
ジルヴェスターの貴族言葉を理解できずにちょっと失敗したり、
平民のことを知らなかったジルヴェスターがちょっと学習したり、
それなりに微笑ましい道中だったんだけど、
ゲルラッハ子爵の手の者がフランとロジーナを襲うという事件が発生ですよ。

大事なモノを守るためなら手段を選ばず全力を尽くすのがマインです。
この時も神に祈ってかなり効率が悪いやり方で魔法を使ってるんですけど、
かなり無茶なんですよね、これって。
穴の空いたバケツで風呂に水を張るようなもんだと思います。
それでもやっちゃえるあたり、マインが規格外なんですけども…

今思うと、この時の襲撃者は神殿長ベーゼヴァンスが、
目障りで劣等感を刺激するマインを始末するために、
ゲルラッハ子爵に依頼したっていうのが事件の本質なのでしょうね。
ただ、ゲルラッハ子爵も神殿長もマインたちが騎獣で移動しているって知らなかったから失敗した訳で…

祈念式から戻ってもジルヴェスターが色々とやって大変なんだけど、
ジルヴェスターなりに色々とマインのために骨を折ってくれてるんですよね。
そのことはアニメの特典SSとかで読めるので、お金に余裕が有ったら読むことをオススメしますよ。

春になってやっと自宅へと帰ることができたマインの笑顔が微笑ましいんですよね…

ただ、この後の展開を知っていると、
この時のマインの幸せがとても儚いものであり、
それを取り戻すために大変な苦労をすることを知っているだけに、
マインの幸せな笑顔の尊さを噛みしめてしまいますね…

それはそれとして今回のMost Favoriteマインはこちらになります。

とても他人事感があって、それでいて可愛い!
頑張れ、ベンノさん!w

:: 2023/12/10 日曜日::

■[ラノベ]これ以上ないほどの大団円!「本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第五部「女神の化身XII」」

ついに完結…!
Web版は2017年3月に完結していますが書籍版はWeb版連載開始から10年目にして遂に完結しました。
全33巻(+短編集2冊&外伝1冊&コミカライズ版書き下ろし短編)という長大な物語が、
これ以上無いほどに見事な大団円を見せてくれました。
これほどまでに美しい物語は他に類を見ないですね。
どちらかというと女性向けの作品で、作者も女性なんですけど、
本当に男女関係なく最後まで楽しめる作品でした。

この完結巻は約2/3が加筆&書き下ろしなので、
Web版を繰り返し読んでいる私にもとても新鮮さが感じられました。
まず、フェルディナンド視点のプロローグからして新鮮なんですよね。
ローゼマインはフェルディナンドに全幅の信頼を寄せているから、
彼女の視点で読む本編からだと緊迫感がそれほど伝わってこなかったんですが、
フェルディナンド視点だと手に汗握る緊迫感が半端なく、読んでて動悸がするんですよ。
フェルディナンドにしても神々が関与する事態なんて想定外だし焦燥感が半端ないんですよね…

一年半会えてなかったけれど、
すぐにローゼマインが貴族らしい取り繕いを身に付けたのを察して本音を見抜けるあたり、
フェルディナンドはローゼマインのことをよく理解していますよね。
それに比べて、メスティオノーラに関しては情報が少なすぎるため対処が後手後手になるのは仕方ないかな…
それでもメスティオノーラの僅かな言動から勝機を読み取ろうとするあたりフェルディナンドは優秀ですよ。
なまじ優秀な分、色々と可能性が浮かんで焦っちゃうんですけどね…
ローゼマインくらいに脳天気の方が人生は楽なんだろうなぁ…w

それにしても呪い返しという概念は新しく出てきましたね。
対象者(この場合はローゼマイン)が神々の過剰な祝福で呪い状態に陥った場合、
対象者が他者(この場合はフェルディナンド)に贈った祝福を、その贈られた側が対象者に返すことで解呪する…
という意味で良いのでしょうか?
メスティオノーラが言いたくなさそうだったのは、呪い返しされる対象だからでしょうか?
それと「呪うならば私にすべきだった」というセリフが続編への伏線になっている気がしますね。

「記憶」のシーンも色々と加筆されたことで、フェルディナンドの感情の湿度と重さが凄くなってますね。
同調させられるローゼマインも大変でしょうけど、だからこそ心の底から理解したことでしょう。
第一部ラストで出会ったばかりのフェルディナンドが言っていた、

「……マイン、私は正直、ここまで親に大事にされ、愛されている君が羨ましいと思う。神殿にいるのは、孤児であれ、貴族であれ、親に必要とされなかった者ばかりだからな」

というセリフが紛うこと無き本音だということが。

それとこの時のローゼマインは下町の記憶がないため、一人称が”わたくし”なんですよね。
Web版では”わたし”だったので、良い修正だと思います。

記憶の中でフェルディナンドは実父の「領地のため」「時の女神のお導き」という言葉に諦観を覚えてますが、
アーデルベルトパパはそれなりに息子に対して情は有ったと思うんですよ。
ジルヴェスターもそうですが、この一族は家族に対する情が深いので。
ただ、ジルヴェスターとヴィルフリートにも受け継がれている、
”無神経な言葉を不用意に言って相手を傷つけてしまう”という一族の悪癖が出ているだけだと思うんですよね…
続編が出て、アーデルベルトの出番があれば、そこら辺ハッキリすると思うんですけど…
どうなんだろう…?

「選んだ未来」で平民に戻る選択肢を提示したフェルディナンドですが、
それを選んだ場合、ローゼマインが考えるように名捧げ側近は殉死させられそうだけど、
流石にローゼマインにはこまめに魔術具を渡したりとケアしそうな気がします。
フェルディナンドにとってもっとも大切なものはユルゲンシュミットよりもローゼマインなんですから。
ローゼマイン本人はまだ自覚がないんでしょうけども。

ただ、ルッツを選びそうだと考えているのはフェルディナンドの本音でしょうね。
ルッツとの記憶が一番繋がらなかったことから、そう考えても仕方がないでしょう。
フェルディナンドが珍しく弱気を見せているように見えますが、
同情を引いて関心を買うためなんじゃないかと穿った見方をしてしまいます。

それはそうと、勝てる勝負しかしない主義のフェルディナンドが、
自分より魔力量が多いジェルヴァージオを相手にした時でも弱気を見せなかったのに、
唯一勝てないかもしれないと弱気になった相手が平民のルッツというのが面白いですよね。

「忙しい日々」では色々と加筆がありますね。
Web版では省略されていたので気付かなかったけれど、
ローゼマインがエーレンフェストに一度戻るのも言われて見れば当然でしたね。
フェルディナンドは色々と理由を並べてたけどその本心は、
”ローゼマインに嫁入り準備をさせてあげたい”
じゃないかな、と思うのですよ。

寮の内装の違いとかも興味深いけれど、
ヒルシュール先生のせいで常識がずれているのに笑っちゃいましたねw
ただでさえ中領地と大領地では色々と常識が違うというのにそこにプラスして常識違いがあるとは…
これからも何かと大変そうだな、と思いましたw

そしてユーディットは相変わらず癒し要員ですね…
できればユーディットもローゼマインの側近を続けて欲しいんですけど、難しいよなぁ…
一族全員で移るくらいしないと難しい気がするよ…

「エントヴィッケルン」でも加筆が多い~!
エグランティーヌとの連絡もしっかりしてて、丁寧さがアップしてますよね。
それにダンケルフェルガー出身のクラリッサが活躍してて、色々と納得ですよ。
忙しいだろうけど、ローゼマインに頼られてとても誇らしくて嬉しいことでしょう。
他の側近たちとのやり取りもとても微笑ましいですよね。
この風景を守るためにフェルディナンドは旧アーレンスバッハ貴族を押さえつけるのに、
ユストクスやハルトムートたちと暗躍しているんだろうなぁ…

意外だったのは城から礎の間に入ったことですね。
大規模魔術をやった時に入ってるから当然と言えば当然なんですけど、Web版読んだ時は神殿から入ったのかと…
まぁ、他の貴族に勘ぐられる隙を与えるわけにはいかないし、当然なのかな?
そしてローゼマインが設定したセキュリティーシステムが彼女らしすぎてちょっと笑っちゃいましたねw
フェルディナンドにバレたら呆れられ、こめかみをトントンしながら説教される気がするけれど、
知られることはないだろうから問題ないでしょうw

「エグランティーヌの訪れ」は加筆が少なめでしたね。
エグランティーヌが何を見てローゼマインたちに謝らなければならないと思ったのかを語られる日は来るのかな?
ジェルヴァージオやラオブルートの記憶を覗いたり、国境門での捕縛事件とか、
色々あったであろうことは想像がつくのですが…
短編集で語れると嬉しいんだけど、どうなんでしょう?

それもこれも王族の自業自得なのでこれから頑張ってもらうしかないですね。
王命を遵守してレティーツィアがアウブ・アーレンスバッハになるためには、
トラオクヴァールが興したブルーメフェルトが分割されるか改名される必要がある気がするんだけど…
どういった手段を取るのかは続編以降のお楽しみですね。

「婚約式」は加筆のせいでボニファティウスのうっとうしさが増量してる気がする…!w
ヴィルフリートの素直な優しさは微笑ましい美点だと思うんだけど、
それによって被害が色々と出てるのがとてもヴィルフリートらしいと思うのです。
婚約式のセリフの全文はドラマCDや来年の短編集でわかるのかな?
ドラマCDを予約したのが今月頭だったせいで、まだ届いてないんですよね… 早く聞きたい…!
そしてあのシーンに挿し絵があるのはとても「わかってらっしゃる!」と思いました。
大変結構ですよ!

「アウブの宣言」はWeb版からほぼそのままでしたね。
慈悲を恵む女神の化身ではなく、自費で賄わせる商人聖女って感じに加筆されてましたねw
地方のギーベがどんな感じなのかは相変わらずまだわかりませんが…
フェルディナンドが過保護すぎるからローゼマインの一人称だと続編でもしばらくわからない気がします。
ビンデバルト伯爵みたいな愚物は今のうちにフェルディナンドが潰すんだろうなぁ…
ローゼマインの心身の平穏のために、じっくりと潰して貰いたいものです。

「研究所と図書館」はちょいちょい加筆されてますね。
ダームエルとのやり取りが追加されてて嬉しかったです。
ちゃんとダームエルが側近を続けてくれるかどうかは、ローゼマインにとっても重要ですしね。
ただ、読者の大半は隠し部屋でのフェルマイにニヤニヤしたことでしょう。
当然私もニヤニヤしちゃいましたけどね!

「エーレンフェストへ」からはほぼ書き下ろしですね。
フェルディナンドが魔王っぷりを発揮する悪辣さを色々と知ることができないのが残念だよ!
ゲオルギーネ派残党や親ベルケシュトック派を叩きつぶす準備をしまくってるんだろうなぁ。
ローゼマインの考えている通り殺しは無理だろうけど、事故死は多発すると思うんだよね…
神からの罰の実態を知るために罠に掛けて邪魔者同士を殺し合わせそうな気さえするよ…!

教科書を貰って喜ぶローゼマインは変わってないですけど、
ローゼマイン本人が申告しているように、男女の機微は勉強不足だと思うのですよ…w
頬を撫でられるのを、頬を摘まむお肉がなくなったからと考えてるあたり、
本当に情緒が足りてないというか…w

オティーリエからの心配というか助言はとても真っ当なだけに貴重ですよね。
地縁がない土地での結婚と子育ては、システムが整った現代の日本でも大変なんですから。
フェルディナンドとその名捧げ側近組はそういったところが疎いでしょうからね…
ゼルギウスとシュトラールの奥さん方がこれから重要になってくる気がします。

そしてヴィルフリートの迂闊なところがここでも出ちゃってる!
そんなんだからハンネローレ貴族院五年生でもやらかしちゃうんだよ!
これからもシャルロッテからのお小言がずっと続くんだろうなぁ…w
ローゼマインと違って自分の側近の将来も全く考えてないだろうし、
本当に困った領主候補生になったもんだけど…
それもこれもヴェローニカの教育結果なだけに、彼がこれから背負っていく呪いなのでしょうね…

「基本色の調合」はこういった細かい設定を本当によく考えるなぁ、と思いますね。
それと筆頭文官になるためのハルトムートのやる気が凄いけど、ハルトムートならやり遂げるでしょうね。
そしてローゼマインの側近が若い者だらけなのは本当に例外だらけなんですね。
だからこそローゼマインが一から作りあげることができたんでしょうけども。

レオノーレは嫁入りしているようなものだし、嫁ぎ先がコルネリウスだから親族の反対もないだろうけど、
確かに嫁入り準備期間が短いのは大変でしょうね。
ほぼ同じ立場のアンゲリカは妹のリーゼレータにほぼ丸投げなあたり、
とてもアンゲリカだなぁ、と納得しましたけれど…w

「アウレーリアの立場」ではきちんと貴族の実家にも挨拶ができてて嬉しかったですね。
そしてダームエルとのことでからかわれるフィリーネがとても可愛いですね。
今までも短編では側近仲間にからかわれてたのに、
そこに主であるローゼマインが加わったのだからたまらないでしょうw
あと、「ダームエルはそんなことをしてくれません!」には笑っちゃいましたw
来冬発売の短編集3では祈念式で二人の間にどのようなことが起こったのかが収録されることを期待していますよ!

久しぶりの登場のミュリエラが生き生きしてて楽しそうで微笑ましいですね。
今のところローゼマインが作りあげた図書館都市の理解者に一番近いのが笑っちゃったな。
おそらくローゼマインの理想を一番理解してくれるのはソランジュ先生だと思う。
次点がミュリエラとリュールラディではないでしょうか?

アウレーリアの父がエックハルトに始末されたのはふぁんぶっく8で知ったけど、まぁ、そこは予想通りでしたね。
そしてローゼマインにはその裏側が知らされてなかったのも予想通りでした。
レオノーレとハルトムートなら察することができるだろうけど、二人がローゼマインに教えることはないでしょう。
ローデリヒなら調子に乗って言いそうになるかもしれませんが、間違いなくまたヴァッシェンで黙らされますねw

それにしてもガブリエーレの肖像画を飾ってるとかライゼガングのひいお爺ちゃんが狂気すぎる。
ローゼマインは「恩人ならともかく」と言ってるけど…
それをレオノーレがそのまま伝えた結果、ローゼマインの肖像画が飾られることになる未来が見えますね…!
アレキサンドリアに移ったヴィルマの初めての仕事がそれになるんじゃないかな…?w

アウレーリアが連座にならないのは予想できてたけど、ちゃんと確証が得られて良かったです。
さすがにフェルディナンドもローゼマインが懇意にしている義姉を処分することはできなかったのかな?

「母の激励」でジークレヒトと会えたのは良かったですね。
次に会えるとすれば…、洗礼式には参加できるのかな? ヘンリエッテの洗礼式にも参加しそう。
エルヴィーラとの会話も一年前と同じ部屋なのに雰囲気が変わっていて嬉しいですね。
ローゼマインの偉業を表面的なことではなくその本質を突いて素直に褒めることができるのは、
貴族の実母であるエルヴィーラにしかできないでしょう。

そして防衛戦での情報連絡が予想以上にされてなかったのにはカルステッドたちにガッカリだよ!
まぁ、カルステッドらしいとは思うけどね! そんな暇はなかっただろうし! 機密性高いし!w
騎士団長の第一夫人はこういったところも耐えないといけないんだから大変だ。
コルネリウスは恋愛結婚なのだし、レオノーレのことをしっかりと気遣ってあげてくださいよね!

そして母親からの心配と、夫を持つ者の先達としての助言がローゼマインの不安を溶かすのは良いですね。
嫁入り前の娘と母親との語らいっていうのはこういうものなのでしょうね。
独身の私には全く想像ができなかったシチュで新鮮です。
そしてしんみりした雰囲気をぶっ壊すくらいにエルヴィーラの恋物語好きっぷりを見せつけられて笑っちゃいましたね!
そうだよね、フェルディナンド救出劇は創作意欲を刺激しまくりだよね…!
エルヴィーラが捏造…、もとい、考えた婚約魔石の言葉も気になるところです…!

「神殿の側仕え達」の冒頭でカルステッドの館の側仕えたちとのやり取りが有ったのは丁寧で嬉しかったですね。
幼女時代のローゼマインの可愛さを知る、数少ない人たちですからね。
エルヴィーラが厳選したからこそ、良い人が揃っていたんでしょう。
本当にエルヴィーラの母としての愛情は素晴らしいですね。

神殿に着いたら懐かしい面々に会えるんだけど…
フランとザームが慣用句として言ったことをそのままの意味で受け取ることができるのはローゼマインだけ!w
ここでもユーディットが良い仕事をしてくれるんですよねー
本当に彼女が護衛騎士でいるのは癒しなんだよなぁ…w

ディルクは元気そうで良かったけど、これから大変だろうから頑張るんだぞ!
ふぁんぶっく8で明かされた身食いの特性をローゼマインが周知させれば、
ディルクも結婚相手も見付かる可能性があるとは思うんだけど…
今のところ一番可能性があるのはブリギッテの娘のリラローゼくらいしか私には思いつかないな…

あの悪童だったギルが孤児たちの目標になるくらいまで成長したのは感慨深いなぁ…
将来的にルッツと一緒に書店を開くみたいな話をどこかで読んだけど、おそらくそうなるでしょうね。
その場合はフォルクみたいに妻帯者になる可能性もあるので、本当に楽しみです。

そしてデリアの出番まであるとは思いませんでしたね。
挿し絵までバッチリ有って驚きましたけど、嬉しかったです。
ローゼマインの気遣いも丁寧で、デリアと言えば忘れない「もー!」も健在で微笑ましかったですね。

「商人達との話し合い」でメルヒオールに釘をさすローゼマインは現実をよく理解していますね。
弟妹には優しいけれど、教育には甘さを許さないのはフェルディナンドの教えが感じられます。
この分なら将来生まれる我が子への教育も大丈夫そうですね。

ミルダは本編では初登場だけど、見た目はコリンナさんでも中身はわりとベンノさんだったよ!
これはプランタン商会エーレンフェスト支店の将来も安泰だね!
そしてベンノさんはとても有能すぎるね! 頼もしい!
転移陣を使って引っ越しは私も考えてたけど、寮経由なのは想定外だったなぁ。
まぁ、グーテンベルクの荷物も嫁入り道具みたいなものだと強弁して渋る文官を説得するんだろうなぁ…w
引っ越しに護衛にダームエルが付くだろうとは予想していたけれど、シャルロッテが頼むのは想定外でした。
というかシャルロッテが頼もしすぎる!
やはり次期アウブとして防衛戦で活躍したのが経験として大きかったのかもしれない。

「就任式の衣装と図書館の閉鎖」この時の衣装が表紙になっているやつですね。
フロレンツィアもちゃんと母親だったことがわかって嬉しいですね。
そしてラザファムが大人しそうな顔をしてたのに内面が過激で驚いちゃったよ…!
そりゃエックハルトと仲良くできるわけだよ!
彼がヴェローニカにどのような目に遭わされてきたのか知るのが怖い!

「エーレンフェストとの別れ」ではリヒャルダともう会えないのが寂しいですね…
早く遊びに来られるくらいにアレキサンドリアを発展させたいね…
別れの女神ユーゲライゼが象徴するのは巣立ちだというのがよくわかる別れでしたね…
ここで挿し絵を入れるのは読者の涙腺を刺激しすぎだと思うんだ…

そして感動的な場面の直後にヴィルフリートの無神経さがここでも発揮しちゃってて台無しだよ!
本質を突く洞察力はあるけれど、それをオブラートに包む気遣いができないのがヴィルフリートの致命的な欠点だよ!
そしてボニファティウスはじじ馬鹿がすぎるよ! でも愛情がたっぷりだよ!
そんな貴族の家族の愛に囲まれていたローゼマインは幸せだったんだなぁ、と感じますね…

「就任式の朝」は冒頭からエーレンフェスト貴族のレベルは低さが出てて残念でしたね…
ローゼマインがエーレンフェストの領主候補生だったから勘違いしてるのかもしれないけれど、
上位領地を相手に平身低頭なのがエーレンフェストの社交だったのに、
これから上位の大領地のアウブとなるローゼマインを相手に無礼すぎると考えられないあたりが本当に残念です。
これからシャルロッテが改革していくんだろうけど、これから大変だろうなぁ…

衣装の噂に関しては表紙を見た時に読者の大半は察していたよ!
ローゼマインが意図せず選んだろうとは思ってたけど、周りは当然理解していたんだね!
二人の仲にもニヤニヤできるけれど、
ダームエルとフィリーネのこともニヤニヤできますね!
これはコルネリウスがレオノーレのことを秘密にしていたのが正解だったとよくわかる光景ですよ…w

ユーディットはまだ悩んでるけれど…
もし自分がローゼマインの側近を続けられなくなっても、
自分の子供にアレキサンドリアの貴族と結婚させてローゼマインの子供の側近にさせる可能性はゼロではないと思う…!

側近を既に辞しているけれど、ブリュンヒルデともきちんと会話できたのは嬉しかったなぁ。
そう考えると、立場上仕方ないとはいえブリギッテとお別れできなかったのだけが心残りだなぁ…
成人したらダームエルたちを迎えに来るから、その時に会えると期待しておきましょう。

「就任式」でマグダレーナが第一夫人になってる!
可能性は高いと思ってたけど、フェルディナンドが言うように、それをトラオクヴァールが決断できるとは思わなかったのです。
防衛戦の時にマグダレーナが代わりに動いたように、妻たちが話し合って勝手に動いたんだろうね。
妻たちはトラオクヴァールがツェントになる前から惚れて支えてきましたからね。
アウブになったからといって離れるなんてしないでしょう。
ラオブルートには裏切られたけれど、女性の縁には恵まれてると思いますよ、トラオクヴァール様…!

そして金粉がやはり金粉のままなのには呆れて笑いが出ちゃいましたね。
この傲慢さがハンネローレ貴族院五年生にも続いてるんだなぁ…、と容易に想像出来ちゃいましたよ。
即座に離婚を決めたアドルフィーネは本当に優秀ですよね。
来年の嫁盗りディッターで思いっきりやっちゃってください!

舞台に歩きながらの回想で、本当にこの物語が完結するんだなぁ、としんみりしちゃいましたね。
まぁ、その後にフェルディナンドの罠に掛かって不満を出す下位領地の面々が場違いで苦笑しちゃったけど。
そうかー、確かに下位領地は騒動の顛末どころか、ローゼマインがメスティオノーラの書を持っていることも知らないのか。
トラオクヴァールが継承の儀式で具体的に何を説明したのか知らないからこそ、気付かなかったなぁ。
不満を言い出した領地はおそらくインメルディンクじゃないかな?
あとは女神の化身に慈悲を恵んで貰えなかった元負け組領地の面々でしょう。

エピローグの「帰宅」はWeb版の頃から何度も読み返した最高のエピローグですね。
この感動は読者の心が感じるものでしょうから、多くは語りません。
ラストの挿し絵のローゼマインの笑顔が、マインの笑顔だったことが全てを物語っていると思います。
巻末収録のカラー口絵や、描き下ろし漫画を含めて椎名優さんは本当に良い仕事をしてくださいましたよ!
神に感謝を!

それと特典SSですが、トラオクヴァール視点でしたね。
おそらく時系列的には就任式より前になるでしょうか?
息子のジギスヴァルトとは違って、エグランティーヌをツェントとして敬っているのが伝わってきました。
ベルケシュトックの城を拠点とするのには驚きましたけれど、
トラオクヴァールが述懐してた理由を読んで納得しました。
ラオブルートに裏切られたのがトラウマになってるんだろうなぁ…

トラオクヴァールは政変の被害者だけど、加害者でもあるんですよね。
旧ベルケシュトックの統治は難しいけれど、やり甲斐はあると思うので、
粉骨砕身して頑張って欲しいところなんですけれど…
レティーツィアへの王命とヒルデブラントとの婚約を考えると、
そのままレティーツィアに譲られそうな気がしないでもないですけど。

時の女神のお導きは続編への伏線ですが、これの詳細も早く知りたいんですよね!
あぁ、早く読みたい…!
まずは来夏のハンネローレ貴族院五年生ですね!

それとこれを読んで思ったのですが…
フェルディナンドがトラオクヴァールに怒った理由は、自分との契約だけでなく、
先代ツェントと先代アウブ・エーレンフェストの契約も反故されたからなんじゃないかな?
と思いました。

責任有る者の無知が罪であることは幼い頃のヴィルフリートと同じですからね。
トラオクヴァールの立場上難しかったとはいえ、今まで無知であったが故にどれだけ被害をもたらしたのか、
これから身をもって知ることになるでしょうが、
アウブとして魔力を捧げる達成感を得られるでしょうし、
支えてくれる妻が三人もいるので、立ち直って、
誠心誠意罪を償ってくれることを期待しましょう。

:: 2023/11/17 金曜日::

■[漫画]宝盗りディッター、開戦!「本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第四部「貴族院の図書館を救いたい!」」7巻

図書館シュミルの管理者の立場を強奪に来た大領地ダンケルフェルガーと、
図書館を蔑ろにする管理者は断じて許さないローゼマインの間で戦いが勃発!
王子の取りなしとルーフェン先生の提案で管理者権限はディッターで決めることになったけれど、
それは今ではやらなくなった宝盗りディッターという競技で…

さぁ、ついに来ましたよ! 宝盗りディッター!
第四部以降では非常に重要なディッターですが、種類が色々あります。
その中でも宝盗りディッターは作中で語れているように領地防衛模擬試合です。

その名の通り領地の礎である”礎の魔術”の代わりに魔獣を使った模擬戦です。
簡単に言えば礎の魔術は領地のルート権限みたいなものですから、
それを奪取されたら管理者変更されて前任者は簡単に処分されちゃうのです。
領地の防衛と他領への侵攻、どちらも考えないといけない高度な駆け引きが必要なのですが、
政変以降はどの領地も余力がないので行われていなかったんですよね。

そんなお互いに真っ新な状態なんだけど、ローゼマインは本を読んでるから戦術も知ってるし、
一年生なのに参加する胆力も有るし、何よりも有効な戦術を即座に組み立てる頭脳がいるのです!

それもローゼマインの特異的な騎獣を使って宝を護るため弱い魔獣を即座に捕獲できる…
という戦術が有ってこそ発揮できるものなんんですけどね。
自分たちの利点を活かし、相手の意表を突く戦術の組み立て方が実に見事です。

それでも相手は常勝不敗のダンケルフェルガー
地力が強すぎるため、幾らアンゲリカやコルネリウスといった個の力が強くても、
軍という全体の力では明確に劣っているのです。
それを即座に理解して、それでも勝つための策を講じることができるローゼマインが凄いんだよなぁ…

それにしてもこういったバトル展開を描くのが勝木光さんは本当に上手いですね。
第四部の担当作家を決めるコンペではディッターがお題だったらしいのですが、
頭一つ飛び抜けてた画力を発揮してたという話でしたが、それにも納得です。
まぁ、「ベイビーステップ」では躍動感溢れる試合をずっと描いてこられましたものね。
抜擢されるのも当然と言えましょう。

巻末には原作の貴族院外伝に収録されている短編を元にしたダンケルフェルガー寮での話が出てましたが、
ここに入れてくるのは流石ですね!
勝木光さんはアクションも上手いけど、原作への理解度がとても深くていらっしゃる!

この短編ではルーフェン先生がただのディッターバカ…、もとい熱血教師ではなく、
学生たちの成長のために動ける優秀な教師だということがよくわかります。
それとルーフェン先生が回想しているローゼマインとフェルディナンドの二人の構図が素晴らしいのです。

この当時の二人の関係性を的確に表現できていると思うんですよね。
フェルディナンド様は後見人であり、教育者であり、保護者であり、かかり付けの医師なんですよ。
フェルディナンド様は凄いのです。

ちなみにルーフェン先生はフェルディナンドが自領の守りを疎かにしたと思ってますけど、
真相はヴェローニカに疎まれたせいで領地の味方が信じられないから、
憂さ晴らしに他領を攻撃しまくっていただけなんですよねw
信頼できる味方を得て暴れまくるフェルディナンドの凄さは第五部終盤までお待ちください…!

それと巻末オマケのヴィルフリート視点での短編ですが、
ヴィルフリートとその側近らしいというか、ダメな子がダメなことを理解していない、
とても困った領主候補生っぷりを見せてて苦笑しちゃいましたね…w

どこがダメかというと、自分の側近を使って情報収集をしようとしない…
というか、ローゼマインから情報が来るのが当然と勘違いしているところですね。
これは祖母ヴェローニカの教育のせいで「周囲は自分を尊重して当たり前」と思ってるからでしょう。
すぐ傍にローゼマインの側近がいるのにローゼマインへの不満を述べたり、
周囲に対する気遣いが皆無なところが一番ダメな子なんですけど…
まぁ、そういったところを矯正しないどころか、助長するような側近を付けられてるからね…
仕方ないね…

さて、次巻ではもう一人の困った子であるトラウゴットのやらかしです。
無能のトラウゴットは既にダメなところを見せてますが、
次の8巻では更にその無能さをさらけ出しちゃいますよ!
お楽しみに!

:: 2023/6/7 水曜日::

■[漫画]家族愛への憧憬「本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第二部 「本のためなら巫女になる!」」9巻

儀式の結果、魔力の多さを見せつけすぎたため貴族に狙われることになったマイン。
護衛対象を護衛騎士が悪意を持って傷付けるという不祥事の始末も行われ、
シキコーザの件で降格処分となったダームエルは、
庇ってくれたマインを守る護衛騎士となるのだけど…

平民のマインの護衛騎士という立場にも不満を見せないし、
むしろ擁護してくれたマインに恩義を感じるダームエルは良い人なんですよ。
そのせいでこれから苦労を背負い込むことになるんだけど、
決して腐らず、自分にできる限りを尽くすところをこれから見せてくれるのです…!
女神の化身にとって一番の騎士にまで上り詰めるので、今から要チェックですよ!

巻末書き下ろしSSではエーファ母さんがヤキモキしてたけど、
ダームエルを直に見ていないから心配するのはわかります。
でも、ルッツの説明のお陰でだいぶ理解が進んでいるのは良いですよね。
本当にダームエルはマイン一家にとって重要な護衛騎士なのですよ。

ダームエルの人の好さとは対照的だったのが神殿長ベーゼヴァンスですね。
本当に嫌な年寄りだというのがわかりやすように、
このコミカライズでは原作より誇張して描かれているんですよね。
神事を蔑ろにしているのも、彼の生い立ちを知れば理解できるし、
これくらいの誇張は全然アリだと思います。

ロジーナへの成人祝いのやり取りとか原作から少し変わってるけど、
マインがとても可愛らしいし良いと思うのです。
金属活字についてもとてもノリノリだし、
マインのマインらしさが詰め込まれててとても良かったです。

そして一番マインらしいし、この作品のテーマが感じられるシーンはやはりここですね…

家族に愛され、家族を愛するマインが、
心の底から笑顔を浮かべることができるのは、
やはり家族からの愛を感じた時なんですよね。

そしてそんな幸せなマインたちを見た時の神官長の表情を、
さり気なく描く鈴華さんの作品への解像度の高さが素晴らしい!
あのたった一コマに込められた神官長の情感を理解するのは、
原作完結巻を読まないと難しいと思うのですよ。
私はもちろんWeb版で読んでいるので理解できているのです!
もし未読の人がいるならば、是非ともあの神殿長の表情を覚えていて欲しいですね。
コミカライズでそこが描かれるまで多分10年以上掛かると思いますけども…

祈念式への出発は次の10巻になりますが、
困ったお兄ちゃんのジルヴェスターが登場ですね。
今となってはここで嬉々として青色神官の衣装を纏うジルヴェスターの異常さがわかりますが、
ジルヴェスターがいなければ詰んでた場面が多いだけに、
何だかんだで良い仕事をすることになるので、10巻にも注目ですよ!

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