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:: 2011/9/19 月曜日::

■[ラノベ]氷の俺と空気を読む衆愚と「灼熱の小早川さん」

灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)
著者/訳者:田中 ロミオ
出版社:小学館( 2011-09-17 )
文庫 ( 264 ページ )
絵師サイト:「ni」のプロフィール [pixiv]

ヤバイ、面白すぎて死ぬ…!

これだ! これだよ! 田中ロミオはこれだから侮れないんだよ!
人類は衰退しました」のように毒を何重にもオブラートで包んだ作品ではなく、
AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~」のような禍々しい美しさが光り輝く作品が、
この「灼熱の小早川さん」でした。
いや、マジで田中ロミオぱねぇな!

空気を読んで上手く立ち回り、実家も裕福で勝ち組人生だったはずの飯嶋直幸が、
空気を気にせず規律と正論を以て集団の和を破壊する小早川千尋を観察するだけのはずが、
クラス代表になった小早川さんの独裁に対する緩衝材としてクラスの空気によって選ばれ、
内心嫌々だったけど、小早川さんが空気を読みながら行動していたことを知り、
そこから興味をもっていくと、クラスの別の面が見えてきて…

もうね、とにかく現代日本における空気を読むことを強制する雰囲気というものを的確に浮かび上がらせ、
それによって起こるクラス崩壊という小規模ながらも生々しい絶望が感じられて鳥肌モノですよ!
こういったことは現代日本では別に高校の一クラスだけに当てはまるものではなく、
帰納法的に考えれば現代日本そのものなのではないかな、と思ってしまいます。
それくらいに田中ロミオさんの文才っぷりは素晴らしかったです。

何度も作中で直幸が言ってますが、クラスメイトの一人ひとりは悪人ではなくむしろ良いヤツなんだけど、
空気を読む集団となると途端に問題児たちばかりになるという不思議。
しかも、数年前にモンペが起こした抗議活動により熱血教師達は牙を折られ、
生徒の自律によって運営されるはずが、空気を読むことを至上とする他律的な同調圧力がクラスを支配し、
現代の世知辛い友達地獄が醸成され、いじめが悪ふざけとされる怖ろしい雰囲気になってるんですよね。
閉じられた狭い世界だけしか知らない、ということの恐ろしさを実感させられます。

実際、何度か直幸はクラスメイトに委員会を頼んでいる時も、
頼まれた当人はこれっぽっちも罪悪感がなく「みんなやってるから」「これくらい大丈夫」
といった軽い気持ちで「まわりの流れと関係なく行動するのって幼稚」だという考えに流され、
それを当然として行動している様は、群青色な人よりも空恐ろしい透明っぷりでしたね。
空気を読むことの恐ろしさの片鱗を味わいました…

そしてそんな大衆を衆愚として認識せざるをえなかった中学生時代を乗り越えた小早川さんが、
必死になって規律を以てクラス崩壊を食い止めようと奮闘しているんだけど…
直幸の視点から語られる小早川さんの奮闘が全くクラスの衆愚に届かないのがもどかしくて腹立たしい!
生徒会とかクラス代表会議だとむしろ小早川さんみたいなのが当然なのに、
問題児クラスの1-Bでは孤立無援なのが読んでいて胸が締め付けられそうで、
だからこそ、直幸には頑張って欲しくて続きを熱望して読んでしまうんですよね。

というか小早川さんが実は可愛すぎる女の子であるギャップが素晴らしいんですよ。
いや、ラブコメ成分が少ない本作ですが、それでも充分萌えられるギャップ萌えでした。
6時に起床してまずやることが「啓蒙活動」という名の掲示板荒らしだとか、
直幸にヲチされる痛いブログ運営者でクラスの独裁者なのに、
一人でネコミミ&ネコしっぽをつけてたりするなんて正直反則ですよ!
そして、それまでの小早川さんの印象を吹っ飛ばすバレンタインでのあの台詞には、
正直キュンってきちゃいましたよ。

もう幾らでもこの面白さを語れそうなんですが、とにかく面白いから買って読んでください、
としか言いようがないです!
いやー、本当に素晴らしかった。
これだからガガガ文庫は侮れない…!

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